株式会社SHIFTの技術顧問に就任しました
この度、縁あって株式会社SHIFTの技術顧問としてお手伝いさせて頂ける機会を得ました。
SHIFTさんと僕は随分昔からのお付き合いになります。僕の記憶が確かなら、2010年頃だったでしょうか、JJUGのイベントに登壇するために訪日していた時に、社長の丹下さんに「今日本にいらしているなら、是非!」と仰っていただいて、本当に1時間後位に会場に現れたそのフットワークの軽さに大きな印象を受けたのを覚えています。それ以来、SHIFTさんの社内の自動化チームの方達には、会社での任務という枠を超えてJenkinsの日本での普及に力を貸して頂きました。玉川さん、太田さん、本当にお世話になりました!
それと並行して、CloudBeesも6人の会社から今や500人を超える会社になりました。この期間のほとんど、僕はCTOという立場で会社に関わっていたわけですが、組織が大きくなり、製品の幅が増えるにつれて、どのようにして会社に貢献したらよいのか、色々な学びがありました。この学びを他でも活かす機会があればぜひチャレンジしてみたいという風に常々思っていました。
また、僕は2001年から渡米して以来シリコンバレーをベースに活動しています。そのおかげで、日本のソフトウェア開発と欧米のソフトウェア開発を両方目にする機会に恵まれ、いつからか日本とアメリカに橋を架けたいという想いを持つようになりました。というのも、個人としての日本の技術者は世界の技術者と比肩する優秀な人達が多くいるのに、言葉・時差の壁があって欧米圏の技術コミュニティにとって、日本は存在しないも同然だからです。これは悔しい。
そして、CloudBeesのCTOとしてビジネスの側面に視線が向くにつれ、何より大きな問題は、技術者個人の有能さではなく、技術者を含む様々な職種の優秀な人達を結集して大きなインパクトを生む組織の力の欠如だと思うようになりました。人間一人の力で出来る事には限りがあります。天才技術者が一人いれば何かが変わるという時代は終わったのです。オープンソースコミュニティを作るのも企業を作るのも似ているなと思うのは、色々な人の夢が乗せられる大きな器を作り、彼ら彼女らの熱情を大きなインパクトに繋がる梃子を作るのがリーダーの仕事という点です。この、組織の力の欠如という話は、SIと外注に依存する日本のソフトウェア産業の構造的な問題という話に繋がっていきます。
こういう問題意識を持つように至った僕にとって、SHIFTさんと社長の丹下さんは非常にユニークな会社だと思えました。この会社は大きな野望を持っており、それに手を付けるための体力を急速に身につけているように見えました。産業構造というようなスケールの大きな問題にタックルするためには、相応の体力が必要なのです。
今回、技術顧問として参加してみようと思ったのは、どうせ野望を持つなら国内市場ではなくて、世界を照準に収めて欲しいと思ったからです。僕の感じている世界と日本のソフトウェア開発の乖離に関する危機意識をより多くの人に持って欲しい、それに刺激されて自分の仕事に意義を見いだしてくれる人が一人でも増えれば、と思ったからです。もはや、国内市場だけを相手にしていられる時代は終わったのです。
SHIFTさんはCloudBeesより更に大きな組織ですし、僕はフルタイムのCTOではなくて、使える時間も極めて限られている立場です。太平洋の向こうからリモートで参加するという難しさもあります。でも、CTOとしての仕事の仕方は、技術顧問としての仕事の仕方にも当てはまると思っています。すなわち、僕の想いを伝えてそれが刺さった人達を探し応援し火を付け、現場の技術者達の想いに寄り添い、会社のリーダーの人達に伝わる言葉でそれを伝える、という事です。それに加えて、技術顧問というのは外部の立場なので、会社の現実や歴史的経緯や空気を読まないで、爆弾を投げ込める気楽な立場です。そういう立場でしか出来ない事が色々あるはず。
そういう仕事が出来たらいいなと思っています。うまくいくかは分かりませんが、挑戦しがいのある仕事だと思っています。よろしくお願いします!