Continuous Delivery Foundationが発足しました
既に幾つかのニュースサイトでは記事が上がっていますが、今週、Linux Foundationの傘下で、CloudBees, Google, Netflixなどをはじめとする幾つかの会社や、Jenkins, Jenkins X, Spinnaker, Tektonの4つのプロジェクトが、「Continuous Delivery Foundation」という新しい財団を発足させました。
- CI/CDの世界を標準化? 新たに発足した組織「Continuous Delivery Foundation」とは (@IT)
- Linux Foundationが、継続的デリバリーの協業を促進する新ファウンデーションを発表 (時事ドットコムニュース)
- JenkinsやSpinnakerなどの開発をホストする「Continuous Delivery Foundation」発足。CI/CDの普及とエコシステムの発展を促進 (Publickey)
- Linux Foundationが、継続的デリバリーの協業を促進する新ファウンデーションを発表 (産経ニュース)
CDFの発足は僕にとっても大きな仕事で、これからもこの組織を育てる仕事に色々関わっていくつもりです。なので、その立場から、このニュースを解説したいと思います。
まず、開発者向けツール業界で起こっている大きな流れの一つとして、コモディティ化と合併・大型化というのがあります。Amazon, Microsoft, Googleの三巨人がパブリック・クラウド市場の覇権を掛けて血みどろの殴り合いをする中で、中小ISVは足元で踏み潰されるネズミのような様相を呈しているのです。というのも、三巨人が付加サービスを実質コストのみで提供してしまうので、中小ISVのサービスが単独のビジネスとして大きく成長する絵が描けなくなっているのです。
CI/CD関連では、CodeShipがCloudBeesに買収され、ShippableがJFrogに買収され、また直近ではTravisがIderaという誰も知らない会社に叩き売りされたのは記憶に新しいところです。
Jenkinsはサービスではなくオープンソース・プロジェクトなので三巨人には踏み潰されずに済んでいるのですが、一方でオープンソース陣営には別の問題があります。オープンソースの開発者向けツールには単独ベンダ主導のものが多く、それぞれが分断されています。
また、ユーザー企業のほとんどは複数のツールを連携させて開発プロセスを構築しているのに、その連携・統合の部分を引き受けるコミュニティが存在しないので、様々な会社で車輪が再発明されてしまっているのです。
CDFは、このように分断されたプロジェクトを横断した「傘」を作ることで、これらのプロジェクト間の結びつきを強め、またユーザー企業同士がより広範に協力し合うことを可能にします。HSBC, CapitalOne, Netflixといったユーザー企業が創立メンバーとして加わっているのも、このような視点を評価してくれたからだと思っています。
次に、世の中の別な大きな流れとして、「Software is eating the world」という言葉に象徴されるように、様々な業種でソフトウェアの占める役割がどんどん重要になっています。仕事柄色々な会社にお邪魔してソフトウェア開発に取り組まれている現場の人たちの悩みを聞くことが多いのですが、技術に詳しい現場の人達はDevOps,CDといった取り組みの重要性をみんなきちんと理解しているのに、会社のヒト・カネ・モノを巻き込めず、組織として取り組めていないのが現状です。
これには色々な理由があると思いますが、一つは、CDが技術の取り組みとして技術者のコミュニティで主に話されていて、ビジネスへのインパクトとして経営者のコミュニティで話されていないからです。
CDFは、ベンダやプロジェクトを横断して、CDを技術として説明するだけでなく、ビジネスの人達に通じる言葉で発信する機会になると思っています。組織を動かしている人達に理解され、その成功事例が蓄積されることによって風向きが変われば、こういった取り組みを現場で進めている人達にとって大きな追い風を作ることができます。
まだCDFは生まれたばかりなので、全てはこれからですが、こういった趣旨に賛同してくれる仲間の方がいれば、ぜひ一緒に力を合わせましょう!